スイス・ウオッチの2020年問題 其の二
1969年、セイコーが世界初のクォーツ腕時計「アストロン」を発売
カローラが42万円の時代に、腕時計が45万円。 350個だけの限定数販売でしたが数日で完売しました。その後、日本製のクォーツ攻勢で、スイス時計メーカーは、倒産・休眠・合併でかなりのメーカーがスイスから姿を消しました。
そして、1977年、セイコーの売り上げが世界一に。 (シチズンは4位)
危機感を抱いたスイス時計は、1990年代に入るとスイス・ウオッチメーカーのブランド・グループ化の方向に進みます。
リシュモン・グループ
カルティエ・ピアジェ・ヴァセロン・パネライ・IWC・ジャガールクルト・ダンヒル・モンブラン・ボーム&メルシー 他
LVMHグループ
ルイヴィトン・ブルガリ・ホイヤー・ウブロ・ショーメ・フェンディ・ディオール・セリーヌ 他
スウォッチ・グループ
オメガ・ブレゲ・ブランパン・ロンジン・ラドー・ハミルトン・スウォッチ・ハリーウィンストン・(エタ) 他
スウォッチ・グループに所属するエタというメーカーは、腕時計の機械(ムーブ)を作っている会社です。スイス国内で生産されるムーブはスウォッチ・グループが約60%を生産しておりました。
このエタが、2002年、スイス時計業界を驚かす発表をしました。 (つづく)
スイス・ウオッチの2020年問題 其の一
1971年スイス政府は国内の時計メーカーに対し「SwitzerlandまたはSwissの呼称を適用する基準を規定する法令」を規定しました。
1992年と1995年に改正、「SWISS MADE」「SWISS」と表記する場合
①内臓するムーブ(機械)がスイス製であること
②時計の組み立てがスイス国内であること
③最終検査がスイス国内で行われていること
④ムーブの部品が50%以上、スイス製部品が使用されていること
などが決められました。
しかし、2006年、アジアで製造されているにも関わらずスイス製として化粧品や片手鍋が販売されていることを当時の法務大臣が批判。スイスネス法(スイスらしさ)の検討が始まりました。
この検討によって、スイス時計協会は「スイスメード」と呼べる時計の基準を機械式は、80%以上、電池式は60%以上スイス国内で作られているものにすべきだと主張しました。ムーブ80%以上ではなく、時計全体の80%以上とすることで、低価格帯メーカーに配慮もしました。(スイスで調達できない、金属、金、ダイヤなどは含まれません)
この法案は、2016年、Swissness(スイスネス)に関する新たな法案枠組みと同時に発効しました。新法に適応する時間を生産者に与えるために移行期間も認められ、期限は2020年までとなりました。
これによって、2020年以降、スイスメードと表記できない時計メーカーが出てくるかもしれません。
しかしながら、スイス時計にとっては、もう一つの2020年問題があります。(つづく)